アジアインターナショナルヘンプエキスポ2024完全レポート

〜タイ・バンコクで見たヘンプ産業の未来と日本の存在感〜

はじめに

近年、アジアにおけるヘンプ(大麻)産業が注目を浴びています。環境に優しいサステナブル素材として、またCBD(カンナビジオール)などの有用成分の供給源としても需要が伸び続けるなか、タイや日本を中心としたアジア各国のヘンプ市場は今後さらなる成長が期待されています。

そのような状況下で2024年11月27日〜30日にタイ(バンコク)で開催された「アジアインターナショナルヘンプエキスポ2024(Asia International Hemp Expo&Forum 2024)」は、アジア最大規模のヘンプ関連イベントとして大きな注目を集めました。今回は、ヘンプ関連メディア「CBD部」の担当者として実際に現地で体験した内容をもとに、イベントの全体像と主要なトピック、そして日本市場におけるヘンプビジネスの可能性についてレポートします。アジア市場におけるヘンプ産業の最新動向や、業界リーダー・投資家とのネットワーキングの様子などを余すことなくお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。

アジアインターナショナルヘンプエキスポ2024とは?

開催概要

  • 会期:2024年11月27日〜30日
  • 会場:クイーン・シリキット・ナショナル・コンベンションセンター(タイ・バンコク)
  • 主催N.C.C. Management & Development Co., Ltd.
  • 出展対象
    種子・栽培技術・加工技術・機械・包装・ハーブ・スパ・医療・栄養・食品・飲料・化粧品・ペット関連・ファッション・自動車部品・医療観光・家具・建材・バイオエネルギー・原材料・アウトレット機器など、多岐にわたる領域。

本エキスポにはアジアを中心とした世界各国のヘンプ関連企業が一堂に会し、最先端の製品展示や最新研究成果、ビジネスマッチングセッションが数多く行われました。
出展社数は前年と比べてさらに増加し、出展ブースは500社以上、来場者数は12,000人以上と言われています。タイ国内だけでなく、日本や中国、インド、マレーシアなど、アジア各国から政府機関や投資家、バイヤー、研究者が参加していたのが印象的でした。

2023年までの歩み

タイでは医療用大麻の一部解禁をはじめ、CBD製品やヘンプ栽培に対する法規制が緩和されつつあり、ヘンプ産業に対する期待値が大幅に高まっています。2023年に開催されたアジアインターナショナルヘンプエキスポでも、その成長可能性が大きく示唆されていましたが、2024年は「国際的な産業連携」をさらに強化し、より注目度の高い展示会へと発展しました。

オープニングセレモニーの見どころ:ゴールデンヘンプのファッションショー

本イベントのオープニングを飾ったのは、日本が誇る高品質ヘンプブランド「ゴールデンヘンプ」を用いたファッションショーです。
ゴールデンヘンプとは、日本国内で栽培・加工されたヘンプ素材で、繊維としてのクオリティが非常に高いことで知られています。実際にランウェイに登場したモデルたちが着用する衣装は、肌触りが良く、光沢のある生地感が印象的でした。日本の伝統的な繊維技術とヘンプ素材の可能性が融合したコレクションは、国内外のバイヤーやデザイナーの目を見事に引き付けていました。

高品質の日本ヘンプが世界に通用する証明

ヘンプの繊維は強度と通気性に優れ、サステナブルな素材として世界的に評価を高めています。そのなかでゴールデンヘンプは、生産から製品化までの品質管理が徹底しており、「世界に通用する日本製ヘンプ」として海外のバイヤーからも高い注目を浴びていました。

「日本のヘンプはここまで進化しているんだ」という感想を多くの関係者が口にしていたのが印象的で、オープニングセレモニーを通じて日本のヘンプ産業の技術力とブランド力が強くアピールされる形となりました。

アジアヘンプインターナショナルフェデレーション発足

オープニングセレモニーではもう一つ大きなニュースが報じられました。それが「アジアヘンプインターナショナルフェデレーション」の設立です。
この団体は、アジア全体のヘンプ業界を統合・連携させることを目的とし、タイや日本、中国、インド、マレーシアなどの主要なヘンプ関連団体や企業が参画しているとのこと。とりわけ注目されたのは、日本を代表する重要人物が参加している点で、アジア各国と日本との連携強化を象徴する出来事となりました。

アジア地域のヘンプ産業連携の拡大

これまで各国それぞれの規制や法整備の違いから、ヘンプ産業はローカル単位での展開が主流でした。しかし、アジアヘンプインターナショナルフェデレーションのような横断的な団体が発足することで、情報共有や技術・人材交流、国際的なビジネスマッチングがより円滑に進むことが期待されています。
特に日本のヘンプ産業は法規制の歴史的背景などもあって、海外との連携に課題を抱えていましたが、こうした枠組みを通してさらなる成長が見込まれそうです。

アジアヘンプアントレプレナープログラム(AHEP)

今回のエキスポでは、アジアヘンプアントレプレナープログラム(AHEP)という新たなプログラムにも注目が集まりました。AHEPは2024年4月に発足したもので、アジアを中心に、ヘンプ/CBD産業の起業家や企業を支援する取り組みです。

AHEPについてはこちら

AHEPブースの盛況ぶり

AHEPは日本企業として出展していたのですが、ブースには日本市場に興味を持つ世界各国の事業者、企業家、投資家が多数訪れ、大変な賑わいを見せていました。各国のスタートアップや既存企業がAHEPの専門家とコミュニケーションを取りながら、投資や共同事業のコラボレーションを模索していたのが印象的です。
具体的には、投資家からの資金提供の可能性や技術提携、サプライチェーン構築など、ビジネスを拡大するうえで欠かせない機会が豊富に提供されていました。

ジャパン・インベスターデイで示された日本のヘンプ市場の可能性

エキスポ2日目となる11月28日には、「ジャパン・インベスターデイ」という特別なイベントが開催されました。ここでは、タイや日本だけでなくアジア全域、さらには欧米など世界中のヘンプ市場の拡大可能性について議論され、業界リーダー、投資家、バイヤー、企業家が一堂に会する貴重なネットワーキングの場となりました。

日本が注目される理由

日本は、従来は大麻取締法の制約によりヘンプ産業が限定的でしたが、近年はCBD製品の普及や医療研究の進展、さらには法改正の動きが話題となっています。こうした背景から海外の投資家や事業者が日本市場に強い関心を抱いており、「ジャパン・インベスターデイ」では日本の規制動向やマーケット特性、今後の成長シナリオなどが具体的に共有されました。

参加者からは、「今後日本市場が開放されれば、アジア全体のヘンプビジネスにとって大きなチャンスとなる」という声が多く聞かれ、日本への投資意欲やコラボレーション希望を示す海外企業も少なくありませんでした。

関連イベントの充実と拡張:特別視察ツアーの魅力

エキスポ期間中には、特別な現地視察ツアーも開催されました。これはタイのヘンプ分野で進展する最先端の取り組みを直接目の当たりにできる非常に貴重な機会として、多くの参加者が関心を寄せていました。具体的には、政府製薬機構(GPO)の工場を見学したり、Kanatech Asia & Story Dispensaryを訪問するなど、製薬・医療分野や流通現場のリアルなヘンプ産業の実態を知ることができるプログラムが用意されていました。

なぜ視察ツアーが重要か

ヘンプ産業の魅力は単に製品やビジネスモデルだけでなく、実際に現地でどのように栽培・生産・加工されているかを確認することで、より深い理解やリアリティを得ることができます。海外の企業家や投資家にとって、タイの政府機関や先進的な事業者との連携はビジネス上の大きなアドバンテージとなり得るため、視察ツアーは強い関心を集めました。

特に強調したい点
タイ政府は医療用大麻やヘンプ産業への支援を積極的に行っており、規制緩和や研究開発が進んでいます。こうした制度面の後押しを背景に、タイはアジアにおけるヘンプ産業のハブとしての地位を確立しつつあり、その最先端事例を直に見学できた意義は非常に大きいと感じました。

タイと日本をつなぐヘンプ産業の未来

本エキスポを通じて、タイと日本の距離が一気に縮まったと実感する参加者も多かったのではないでしょうか。タイはヘンプ規制を積極的に緩和し、さまざまな国とのビジネスマッチングや投資機会を開いています。一方の日本も、CBD市場の盛り上がりや、医療研究の解禁などにより、国内外から関心を集めています。

  • タイ企業にとっての日本
    日本市場は品質へのこだわりが強く、高級路線の商品需要も大きい。また、日本の安全基準や品質基準は世界的に見ても厳格なため、それをクリアできればグローバルに通用するブランド力を獲得しやすいというメリットがあります。
  • 日本企業にとってのタイ
    研究開発が進むタイに生産拠点やパートナーを持つことで、アジア市場のハブとして事業拡大を狙える可能性が高い。また、比較的安定的に原材料を調達できる点や、世界中の投資家と繋がりやすい点も魅力です。

今後の課題と展望

法規制の問題

アジア全体でヘンプ産業が盛り上がりを見せる一方、各国の法規制はまだ完全に統一されていません。日本では大麻取締法や医薬品医療機器等法(薬機法)の規定が存在し、CBD製品の扱いについても解釈が分かれる部分があります。タイは大きく規制を緩和しているものの、他国との輸出入に関するルールは今後さらに精査される必要があるでしょう。

品質管理と安全性

CBD製品をはじめとするヘンプ関連商品では、製品の品質や安全性を担保することが不可欠です。ISO 17025の取得や第三者検査機関による定期的な品質検査など、国際標準に準拠した体制整備が急務となっています。今回のエキスポでも、各社が自社製品の分析証明書を公開し、信頼性をアピールする場面が多く見られました。

市場教育とエンドユーザーへの認知拡大

まだ多くの消費者にとって、ヘンプやCBDは「大麻と同じもの」という誤解を抱かれやすい状況です。ヘンプが違法成分を含まない安全な原料である場合も多いという事実を、業界として正しく周知しなければいけません。今後はメディアや業界団体を中心に、積極的な情報発信と消費者教育が求められるでしょう。

まとめ:アジアにおけるヘンプの潮流と日本の役割

アジアインターナショナルヘンプエキスポ2024は、アジア地域のヘンプ産業が一層拡大していく可能性を強く示したイベントでした。オープニングセレモニーにおけるゴールデンヘンプのファッションショーや、アジアヘンプインターナショナルフェデレーションの発足など、アジア各国と日本が連携していく未来図が鮮明になったと感じています。

さらに、AHEP(アジアヘンプアントレプレナープログラム)の出展や、ジャパン・インベスターデイなどを通じて、日本市場への投資・ビジネス機会が高まっていることを実感しました。現地視察ツアーでは、タイの先進的なヘンプ産業の現場を直接見学することができ、ヘンプがもたらす社会的・経済的なインパクトをリアルに体感できた点も大きな収穫です。

今後は、各国の法規制の整合性や品質管理の基準をどう整えていくかが課題として残りますが、アジア全体が協力して産業を成長させることで、世界に通用する巨大市場が形成されていくはずです。日本企業がこの流れをどのように活用し、どのように貢献していくかは今後の大きな注目ポイントと言えるでしょう。

タイと日本が手を携え、アジアを中心としたヘンプイノベーションを牽引していく日も、そう遠くはありません。 本記事が、ヘンプ産業の現在と未来を理解する一助となれば幸いです。これからも「CBD部」では、ヘンプ・CBD業界の最新トレンドやイベント情報を追いかけ、皆様に有益な情報をお届けしていきます。ぜひ今後の動向にも注目してみてください。