この度クイーン・シリキット・ナショナル・コンベンションセンター(タイ・バンコク)で開催された「アジア国際ヘンプ博覧会(AIHEF)2025」(Asia International Hemp Expo 2025)(以下、AIHEF)。いまや「アジア最大」といえるヘンプ博覧会に、今年も出展者として参加してきました。
アジアの最先端といわれるタイではこんな大麻市場が広がっている!?本記事ではそんな様子をお伝えできればと思います。
最後まで読んでいただけると幸いです。
アジア国際ヘンプ博覧会(AIHEF)2025とは?
「アジア国際ヘンプ博覧会(AIHEF)2025」は、アジアのヘンプ・医療用カンナビス産業に特化した国際展示会です。タイ・バンコクを拠点に開催されており、ヘンプの栽培技術から加工機械、食品・化粧品・建材・ファッションまで、バリューチェーン全体が一堂に会する“アジア最大級のヘンプビジネス展示会”と位置づけられています。

開催概要
- 名称:アジア国際ヘンプ博覧会(AIHEF)2025(Asia International Hemp Expo 2025)
- 会期:2025年11月5日(水)〜7日(金)
- 会場:クイーン・シリキット・ナショナル・コンベンションセンター(タイ・バンコク)
- 主催:N.C.C. Exhibition Organizer Co., Ltd.(NEO)/Thai Industrial Hemp Trade Association(TiHTA)
- テーマ:Making New Waves(“新しい波を起こす”)
本エキスポは第4回目の開催となり、「アジアでもっとも包括的なヘンプ産業の展示会・フォーラム」と位置づけられています。会場となるクイーン・シリキット・ナショナル・コンベンションセンターは、バンコク中心部に位置する国際会議場で、世界各国からバイヤーや投資家、研究者が集まりやすいロケーションです。

来場者は、タイ国内だけでなく、日本・中国・インド・マレーシアなどアジア各国のヘンプ関連企業、政府機関、投資家、バイヤー、研究者が中心です。2024年時点では約150〜200社の出展と数千〜1万人規模の来場があり、2025年は約300社・5千〜1万人規模(57か国)を見込む国際的なビジネスイベントとして開催されました。
アジア・ヘンプ産業の「ハブ」としての役割
AIHEFがバンコクで開催される背景には、「タイがアジアで最初にヘンプを合法化した国である」という事実があります。栽培に適した気候と立地条件、そして法制度面での先行により、タイはヘンプ関連ビジネスの生産拠点・技術拠点として世界から注目を集めています。
主催者は、このエキスポを通じて、
- 最新の栽培・加工・製品化技術の情報を共有する場
- タイにおけるヘンプ生産拠点の設立を後押しする場
- アジア各国のプレーヤー同士がビジネスマッチングを行う場
として機能させることを掲げています。セミナーやフォーラムでは、規制動向、医療・ウェルネスでの活用、サステナビリティ、サプライチェーン構築など、実務に直結するテーマが多く取り上げられています。
本記事で紹介している「AIHEF」の現場感は、日本の事業者にとって、単に海外トレンドを視察するだけでなく、「自社はこのアジアの流れの中でどこにポジションを取るのか」を考えるよい機会になったのではないでしょうか。

大麻「生の植物」が並ぶ光景と、年々変わる会場の空気
会場に入って数分で、改めて強く感じたのは「やっぱり日本のイベントとは前提がまったく違うな」ということでした。
一番わかりやすいのが、大麻の植物そのものが普通に展示されていることです。 花穂をつけた株がショーケースに並び、来場者が香りを確かめ、その場で商談が進んでいく――。
日本国内では、法制度上あり得ない光景が、ここではあくまで「ビジネスの一場面」として存在しています。
とはいえ、今年で3年連続の参加になりますが、体感としては「年々少しずつ風景が変わってきている」のも事実です。
規制の影響もあってか、植物そのものを大胆に展示しているブースは、以前よりも明らかに減っているように感じました。
イベントの規模感や来場者数も、ピーク時と比べると少し落ち着いてきており、「一気に盛り上がった後、第二フェーズに入ってきている」という印象を受けました。
政府と民間が「一緒に盛り上げよう」としている現場
そんな中で、今年特に強く印象に残っているのが、タイの経済産業省や伝統医学局の関係者が会場に足を運び、ブースを回っていたことです。

単なる視察というより、「一緒に盛り上げていこう」という空気が現場レベルで伝わってきました。
国の担当者が、伝統医療や新しいウェルネスのあり方としてヘンプ・カンナビスをどう位置づけるか。 その議論を、机上ではなく、実際のプロダクトやプレーヤーと向き合いながら進めている――。
日本で同じ規模のイベントをしていても、ここまで露骨に「省庁の担当者が会場を歩いている」場面は、まだ多くありません。
タイは「規制する側」と「産業側」が、同じ方向を向く姿勢を、すでに現場で形にし始めているように見えました。

日本のブースには、予想以上に人が集まった
今回、私が担当していたブースには、想像以上に多くの方が足を止めてくれました。

決まって説明していたのは、次の三つです。
- 国際ヘンプ博覧会(JIHE)2025の開催概要
- KCA Labs Japan の検査体制や、カンナビノイド検査の役割
- 日本国内のCBN規制と、それに対する署名活動の趣旨
なかでも「日本国内にて、CBN規制が検討されている。反対意見に著名してほしい。」と呼びかけをすると、みんな口を揃えて「サインするよ」と言ってくれました。それは、今回のタイ出張の中でも大きな成果だった一つだと感じています。
大麻の展示会に来る人たちなので、「規制強化すべきだ」という意見の人はそもそも少ないとはいえ、今回のCBN規制については世界的に見ても違和感を持たれているようでした。
同時に、国際ヘンプ博覧会(JIHE)2025の話にも強い関心を示してもらえました。
「日本でもそんなイベントがあるのか」「今の日本市場はどこまで進んでいるのか」といった質問を多く受け、実際に、後日(2025年11月14日~15日)に開催された国際ヘンプ博覧会(JIHE)に来場された方もいました。
「バンコクでの一言が、日本での再会につながった」というのは、主催側としてもとても嬉しい瞬間でした。
「日本市場はこれからだ」――海外からの期待とプレッシャー
今回の展示会出展で、改めて強く感じたのが「みんな日本市場に注目している」という点です。

来場者の多くが、
- 日本で法改正があったこと
- 医療用・産業用を含めて制度が大きく変わりつつあること
をすでに認知しており、「これから日本はどう動くのか?」という期待と関心のまなざしを向けてきます。
その一方で、CBN規制のような動きに対しては、「そこまでやる必要があるのか?」「なぜそのタイミングで?」という戸惑いも見られました。
褒められているわけでも、けなされているわけでもない。 ただ、「アジアで最後まで慎重に動いている国」として、日本の一挙手一投足が見られている――そんな今後の動きに注目されているようなものも感じました。
花穂よりも「周辺機器・設備」に、日本の勝ち筋を見た
会場全体を見渡すと、様々な色や品種の花穂をはじめ、CBD/THCを含むあらゆる製品が並んでいました。
- EUの生産基準(EU-GACPなど)を満たしたCBD/THC製品
- タイ伝統医療のレジメンに組み込まれたカンナビノイド製剤
- 栄養価の高い植物由来のクラトム製品
- タイ伝統マッサージとCBDを組み合わせたウェルネスサービス など
その中で、個人的に「日本にとってチャンスがある」と感じたのは、実は花穂やオイルそのものではなく、「周辺機器・設備」の領域でした。
例えば、室内栽培用の専用ライト、乾燥機や凍結乾燥装置、ニュージーランド企業が作る土壌栄養検査装置、アメリカ企業の抽出装置、CBD製品用の容器・パッケージ各種など、「栽培〜加工〜検査〜製品化」を支える機械・ツールが一堂に会していました。
カンナビノイド検査の世界では、日本の島津製作所の機器はすでに一定の存在感を持っています。
ここに、
- 栽培環境を安定させる設備
- 品質を担保する検査機器
- ユーザー体験を支える容器やパッケージ
といった日本のものづくりの強みが掛け合わされば、「原料や製品」ではなく「設備・技術」を武器に、世界市場で勝負できる余地は十分にあると感じました。
実際に、「こういうライトメーカーやパッケージ会社が、国際ヘンプ博覧会(JIHE)にも出展してくれたら面白いだろうな」と何度も妄想しながら会場を回っていました。
タイのプレーヤーは「アジアのヘンプハブ」の未来を見ている
次に、EU基準をクリアしたCBD/THC製品や、輸出前提のブースを見ていると、タイのプレーヤーが見ている未来も少し見えてきます。
まず前提として、タイは欧州諸国と比べて物価が安く、大量生産に向いた構造を持っています。 そのため、価格競争力を武器にした「原料供給国」というポジションを狙っていくことが予想できます。
それだけではなく、EU向けの基準を抑えることで、「世界中のメーカーが安心して仕入れられる産地」としての信頼を積み上げる。 観光・伝統医療・ウェルネス産業とヘンプ・カンナビスを組み合わせ、「タイに来れば体験できるヘンプウェルネス」を国のブランドとして育てる。
そう考えると、タイは単なる「欧州の下請け」ではなく、「アジアのヘンプハブ」を目指しているように感じました。
規制緩和から社会実装まで、一気に駆け抜けた「先輩」として。 そのノウハウや制度設計そのものが、今後はアジア各国への「輸出可能な資産」になっていく可能性を感じました。
タイ伝統マッサージ × CBDの相性と、日本のウェルネス市場
もう一つ、今回の視察で特に触れておきたいのが、タイ伝統マッサージとCBD/THC製品の組み合わせです。
タイマッサージは、ただのリラクゼーションではなく、国全体が広めようとしている「伝統医療・ウェルネス」の一部です。
そこに、抗炎症作用が期待されるCBDや、筋肉のこりや疲労回復をサポートすると言われるオイル・バームが加わることで、リカバリーケアとしての体験価値がぐっと高まります。
実際に、タイのマッサージ店でCBD入りのマッサージオイルを使った施術を受けたとき、普段なかなか取れないコリが軽くなったり、終わった後のスッキリ感が強まった気がしました。
もちろん、すべてをCBDの効果だけに帰することはできませんが、「癒し」と「CBD」の相性が非常に良いことを、自分自身の身体で実感した瞬間でした。

「通常のマッサージ料金に、CBDオイル使用をオプションで上乗せする」という形で提供されているところが多く、普通のマッサージ店との差別化の切り札として、うまく使われている印象を受けました。
日本でも今後、
- デスクワークで肩や腰がガチガチな人
- ジムやスポーツ後のリカバリーを大切にする人
- 週末にちょっとしたご褒美時間を持ちたい人
に向けて、CBDマッサージクリームやオイルは「セルフケアの新しい選択肢」として十分に伸びる余地があると感じています。
「疲れて癒しを求めている人が、週末にちょっと自分を労るためのクリーム」――そんな位置づけのCBDマッサージアイテムが、展開されることを期待しています。

タイと日本の違いは「先を走っているかどうか」だけではない
こうして現地で見ていると、タイと日本の麻市場の違いは、単に「進んでいる/遅れている」という話では片付けられないと感じます。
ざっくり整理すると、違いはこんなところにあります。
第一に、規模感と前提条件の違い。
THCが一定条件のもと合法化されているタイと、厳格な規制の下にある日本では、スタートラインも、広がり方もまったく違います。
第二に、国の関わり方の違い。
タイでは、経済産業省や伝統医学局がイベントに顔を出し、民間と一緒に「どう産業として育てていくか」を考えようとしている姿勢が見えました。
日本では、まだリスク管理や取締の側面が強く、「どう育てるか」という議論はこれから、という段階です。
第三に、日常への溶け込み方の違い。
タイでは、伝統医療やマッサージの延長線上に、カンナビス由来の製品が“生活の選択肢の一つ”として置かれつつあります。
一方で日本では、CBDでさえ「本当に大丈夫?」という疑いから始まるケースがまだ多く、社会との距離感はかなり違うと言えます。
ただし、ここで言いたいのは決して「タイは進んでいて、日本はダメだ」という話ではありません。
むしろ、タイは「先行して社会実験をしてくれている先輩」であり、日本は「後発だからこそ、学んでアレンジできる立場」にいると捉えた方が建設的だと感じています。
「タイは進んでいる。でも、日本はきっと超えられる」
最後に、今回のバンコク視察と出展を通じて一番強く感じたことを書いておきます。
間違いなく、タイは日本よりも先を走っています。 法制度のスピード、産業の広がり、プレーヤーの多様さ――どれをとっても、学ぶべき点は多いです。
同時に、「日本はこれを超えられる」とも本気で思っています。
タイで体系化されつつあるノウハウや技術を、日本ならではの精密さ、ものづくり、慎重さと組み合わせて、より高度で持続可能なヘンプ産業モデルに仕立てていくことは、十分に可能です。

そのために、私自身がこれからやっていきたいのは、
- タイや他国と日本をつなぐビジネスづくり
- 海外の事例を「そのまま真似る」のではなく「日本なりにアレンジする」橋渡し役になること
です。
日本の麻・CBD関係者のみなさんに伝えたいのは、「海外をただうらやむのではなく、“先輩事例”として徹底的に研究しよう」という視点です。
タイは進んでいる。だからこそ、日本はそこから学び、自分たちなりの答えをつくっていくことができるはずです。
「アジアのヘンプ産業の物語は、まだ書きかけなんだ」。 そんな実感とともに、日本からの次の一手を考えています。


