今回、スイス発のグローバルCBD/カナビス企業 Astrasana(アストラサナ・ホールディング株式会社)のお二人にインタビューさせていただきました。
スイスのCBD/カナビス事情から、日本のCBD市場に対する考え方、そして日本のCBD/麻産業がグローバルスタンダードに前進するための提言まで、様々なお話を伺いました。ぜひご覧ください!
なお、本記事は、CBD/麻を盛り上げるという趣旨の企画「CBDアドベントカレンダー」に参加しております。
目次
プロフィール
イントロダクション
今回、先進的な技術やカンナビス(大麻)産業における豊富なネットワークを持ち、スイス発で日本を含めたグローバル展開を準備中のアストラサナのお二人にインタビューしたいと思います。CEOのイヴ(Yves)さん、そして日本において代表を務めるチカコさんです。本日は貴重なお時間をありがとうございます。
こちらこそありがとうございます。先日のCBDジャーニーでは、ありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。楽しかったですね。
アストラサナの始まりについて
今日は、アストラサナさんについてはもちろんですが、特に海外の視点から大麻産業全般についても色々とお話を伺えれば幸いです。まず、アストラサナとイヴさんご自身について紹介していただけますか?
アストラサナは、実は、私自身を含めて前身となったチーム全体にとって、この6年間の大麻産業における実績・経験・知見の集大成と言えるものです。
2018年、私は欧州最大のCBD企業に入社しました。その時からチカコと一緒に仕事をしています。現在のアストラサナのチームは、その当時の同僚や、世界中のパートナーなど、当時からの仲間が集結して成り立っています。CBDジャーニーに登壇したトーマス・ライスカ博士もその一人です。
現在、アストラサナは、医療大麻の分野に注力しています。ヨーロッパとスイスでは、今後レクリエーショナル(嗜好分野)も出てくるかもしれませんが、私たちは基本的には医療・医薬品の部分に焦点を当てています。また、もちろんチカコとともに、日本にも力を入れております。
私もチカコも含めて、このビジネスの領域で様々な経験をして学んできたので、いよいよ今こそ自分たち自身でやるべき絶好のタイミングだと思い、アストラサナを始めました。私たちは良きビジネスパートナーなのです。私はヨーロッパ全体(主にスイス)のビジネスを担当し、彼女は日本のビジネスを担当しています。 私たちは常にコラボレーションをしつつ、お互いに独立して仕事をしています。
私自身については、コンサルティング・ファイナンス・会計の業界を経て、この大麻業界に足を踏み入れました。2017年、ちょうどスイスでCBDが合法化され、THCが1%に制限された頃、私はこの大麻業界に参画しました。私は最初、自分の会社を作りましたが、その後すぐに大麻系の大企業の一つに合流しました。これが私のプライベートの話です、プライベート = 仕事なのですが(笑)
ありがとうございます(笑)それでは、チカコさんからもご紹介をお願いできますか?
私がイヴに初めて出会ったのは、彼が前職で仕事をしていた2019年夏でした。当時、私はまだUNODC(国連薬物犯罪事務所)のコンサルタントとしてパキスタンで働いており、CBD市場がどのように進んでいるのか、規制の観点から見てみたいと思っていました。
当時、私の専門はパキスタンでの刑事司法とテロ対策支援でした。 しかし、私は大麻のような非合法製品のポジティブな側面の可能性を見たかったのです。ブラックマーケット(不法な闇取引市場)をなくすことができれば、それはテロ対策の一環になるわけですから。そうしてイヴとの出会いに繋がったわけです。
イヴは、私が日本にスイス製品を紹介する上で、常に頼りになる存在でした。私を助け、日本とスイスの間の架け橋を作ってくれたのは、いつも彼だったのです。もしイヴがいなければ、私は今頃スイス製品を取り扱っていなかったかもしれません。スイスには他にも会社はありますが、なんというか、いい加減なところがあるのです。ただ、彼は良い意味でクレイジーでワーカホリックなのです(笑)日本人の誰よりも仕事人間です。私もワーカホリックですが、彼は良い意味で、より重症です(笑)彼はいつも電話で誰かと話しており、人と人とを繋いでいます。そして、その対応は超迅速かつ的確で、私も自信を持って物事を進めることができるのです。 このような状況にあることは、光栄でラッキーなことだと思います。私は、前職を通じて、彼のコミットメントや情熱、そして優しい面も知っていたので、 アストラサナを一緒にやらないかと聞かれたとき、「はい、もちろん!喜んで!」と即答しました。
欧州におけるCBDの位置付け, スイスの経緯
それでは、ここからCBDについてお聞きします。CBDは、ヨーロッパでは既に一般的なものになっているのでしょうか? ちなみに、日本では、まだまだ一般的とは言えない状況です。
欧州では、ある程度のCBD市場が存在すると言えます。欧州では、いくつか特定のブランドによるCBDオイルから始まりました。 それらは、今日に至っても大きなブランドです。彼らは主にCBDオイルに焦点を当てており、価格は非常に高かったです。ヨーロッパ全域、主に東欧でもそのような状況でした。当初、多くの人々はCBDオイルが何たるかを知りませんでした。
2017年、スイスの法律が変わり、THCパーセント上限を1%にする法律が制定されました。私は当時を昨日のことのように覚えています。そして、その後、フラワー(花穂)が盛り上がる方向にマーケットが進みました。スイスで始まり、イタリアでもTHCの上限値が上がりました。そして、市場の大爆発が起き、わずか3ヶ月から6ヶ月の間に数千もの店舗がオープンしました。きちんとした規制がない状態で、多くの生産者が生まれました。
現在(2023年1月)のタイで起きているカオスと似たような状況なのかもしれないですね。私もタイ視察をしてきましたが、カオスな状況でした。
ほとんど同じかもしれませんね。その後、スイス、イタリア、フランスと欧州全体でこの流れが起きました。最初に起こったことは、多くの実店舗やオンラインストアの大量発生です。その後、最も長く生き残っている企業は、小売チェーンに参画した企業でした。 アメリカにおいてもスイスと並行して広がり始め、当初はヨーロッパとアメリカとで原料の取り合いをしたりしていました。
市場はどんどん大きくなっていきました。短期間のうちに、ほぼ全て西欧諸国と、いくつかの東欧諸国がこの産業に参入し始めました。そして今、いくつかの企業が非常に大きくなりました。さらにその後、昨年(2022年)は市場が50%ほど落ち込み、企業統合が発生し、多くの企業が存在しなくなりました。チカコと私が新しい会社, アストラサナを始めたのは、まさにそうした企業統合が始まって丁度完了したタイミングでした。 昨年半ばまで業界はかなり落ち込んでいましたから、普通の人は新たに企業を始めないでしょう。ただ、私にとっては、これが絶好の機会に見えました。
質問に戻ると、CBDはある程度人気であると言えます。消費者の数が増え、ブームが起き、多くの実店舗が生まれました。こうした盛り上がりは、日本ではもう少し時間がかかるかもしれませんが、いずれは起きるでしょう。実際に実店舗が増えると、それを目にする機会も増えるので、本当の変化が分かるようになります。今日、ヨーロッパでは、みんなとまではいきませんが、かなり多くの人がCBDについて知っており、気軽に店舗等でCBD/ヘンプ製品を買い物することができます。
CBD製品の選び方
欧州ではCBDが一般化してきていることが分かりました。それでは、イヴさんの意見としては、CBD製品をどのように選べば良いのか、教えていただけますか?
難しい質問ですね。正直なところ、まず一般論として、ヨーロッパのブランドの信用よりも、日本のブランドの方が信用に値すると思います。なぜなら、日本人は、すべての書類を極めて慎重にチェックしているのがわかるからです。そして、これは簡単なことではないと私は思います。
消費者として、私はいつも、できるだけ多くのカンナビノイドが混合された製品であることを求めます。CBD単体のアイソレート製品ではなく、多様なカンナビノイドが含まれるブロードスペクトラム製品の方がアントラージュ効果(相乗効果)により効果が高いからです。
企業としては、非常に言いにくいですね。本当に人それぞれ、会社それぞれです。日本には、怪しすぎる製品は、規制や言語の壁などにより、そもそも入ってこないと思います。
ラボの重要性
日本に唯一欠けているもの、これは私が以前から考えていたことですが、日本国内にTHCやマイナーカンナビノイドを定量分析できるラボ(研究室)が必要です。なぜなら、今現在、日本は海外のラボに研究や検査を頼らなければならないからです。問題点としては、カンナビノイド分析装置の分析方法が国や機関によって大きく異なることです。標準的な方法が確立されていません。この点、スイスの政府は、かなり進んでいると言わざるを得ません。良い研究所があり、認定を受けた大きな研究所、食品研究所、製薬研究所があり、きれいな分析ができます。
もし次に日本に行くことがあれば、必ず研究室を見つけるようにします。私は本当に交流を持ちたいと思っているので、スイスのラボと連絡を取り、ラボを日本に設立したり、日本に分析方法を共有できたりするようなラボを探したいと思います。日本人が、自国で自らの製品を分析できるようになるのは、フェアなことですし重要だと思うのです。また、適切な規制をかけるためにも必要です。
そして、それは実は小さな目標なのです。私のサイド目標です。今年、チカコとも話し合いましたが、本当に必要なことだと思います。日本は4年前からCBDに取り組んでいます。ですから、そろそろ自分たちの、例えばHPLC(高速液体クロマトグラフ法)を持つべきでしょう。私自身も、サプライヤーが出してくる分析結果は信用していません。全てのバッチについて、私たちはくまなく検査をしています。日本人も同じことができるようになるべきです。
おっしゃる通りですね。今年、日本の大麻取締法の改正が期待されますが、それにより多くの大企業がこの業界に参入することが予想されます。特にこれらの企業は、この種の検査が必要になると思います。
参考までに、日本の研究所等がTHCを定量分析するためには、現在の規制では、麻薬取扱者の免許を持っている必要があります。そうでないと、THCの標準品物質(検査の基準となるもの)を扱えないのです。国内では、CBD、CBG、CBNは定量分析、THCは定性分析となり、THCの定量分析や他のマイナーカンナビノイドは海外に頼っているのが現状だと思います。
医療用大麻の現状
医療用大麻についてもお聞きしたいのですが、部分的に薬品として日本でも認められることになる予定ですが、スイスでは、既に一般的になっているのでしょうか?現状を少し教えていただけますか?
2022年8月までは、法律が、ベストなものではなかったと言えますね。どの患者もどの医師も、大麻を必要とすると分かったら、スイスの保健省に追加で一つずつ申請をする必要がありました。沢山の書類作成、多くのお金、多くの投資が必要で、製品も非常に高価でした。 そのため、医師が大麻を処方し、すぐに患者がその製品を手に入れられるようにすることは容易ではありませんでした。
しかし、現在では、そのようなことはありません。医師は、患者に大麻が必要だと思えば処方することができ、患者は処方箋を持って薬局に行くことができます。だから、1〜2日で終わるんです。医師は、大麻を処方したことを行政に届け出るだけでいいのです。でも、その届け出は取り締まりのためというよりも、主に研究のためです。 今はどの医師も自由に、患者に大麻が必要かどうかを判断することができます。そして、患者は複雑な申請をする必要がありません。医師が「はい、いいですよ」と言ったら、処方箋を持って薬局に行けばいいんです。
なるほど、素晴らしいルール改正ですね。例えば、スイスに訪れた外国人は、医療用大麻を使うのは難しいのでしょうか?
それは基本的には無理だと思いますが、場合によりますね。観光客としては多分無理です。 スイスに住んでいたら可能だと思います。
なるほど。スイスでは非常に上手くコントロールされているんですね。スイスの人たちにとって、医療大麻は既に一般的な医療の選択肢の一つになっているんでしょうか。
まだ、まったく新しいものです。ほとんど商品の幅がありません、というより、8月から法律が変わったので、市場全体では2、3種類の新製品しかありません。だから、まだ一般化するまでには時間がかかります。製薬業界のスピードは遅いです。
なるほど。日本のイメージとは随分違うのですね。スイスは既に一般的になっているイメージでした。とても興味深いです。ありがとうございます。
患者さんは、どのように医療用大麻を摂取するのでしょうか?フラワーを喫煙するのですか?
スイスでは、医療用のフラワーは、まだ本当に難しいです。喫煙にヴェポライザーが必要ですが、ちなみに、スイスで認められた唯一のヴェポライザーは、私たちのジョイントベンチャーパートナーの下で登録されたものです。
スイスでは、オイルがメインとなっています。医師が薬としてフラワーを吸うことを正当化するのは難しいです。スイスでは、すでに人々がフルスペクトル製品に慣れています。医療用製品もフルスペクトル製品として、THC 5%、THC 10%、といったものがメインになります。私たちはそれらのラインナップを確立しようと思っています。
それらは、一般的には、いくらぐらいなんでしょうか?
THC5%のフルスペクトルオイルが10mlで、製品価格は280スイスフラン程度、280ドルくらいです。非常に高いです。
日本円で3万5千円くらいですかね。
今、競合他社が多くないので、高くなっています。私はこれを見たとき、まったくもって正気の沙汰とは思えませんでした。THCはCBDと何も変わりません。全く同じ製造工程なので、抽出に難しいことは何もありません。私たちは、二百数十スイスフランではなく、100〜125スイスフラン程度でTHC5%、CBDオイルは99スイスフランで売り出そうと思っています。THCは相場価格の30%オフ、CBDは50%オフです。
私の問題意識として、これは公式のデータですが、スイスではTHCや医療大麻製品のリピーターがほとんどいないのです。ドイツと違って、健康保険が効かないので、患者は自腹で賄わなければなりません。月に1回、280スイスフランって、どうやって払えばいいんですか?なので、多くの方は、普通の薬に戻ってしまいます。
なるほど。合法化の後も、システムの変化もあり、そうした課題が残っていますね。
でも、今年中に解決します。私たちがやり始めたら、他の事業者みんなも値段を下げなきゃ潰れます(笑)この価格の適正化を始めることによって、より大きなマーケットが生まれます。より多くの人が来て、より多くの人が消費してくれる、より手頃な価格で、誰でも買えるからです。 100〜120スイスフランで1ヶ月、余裕のある人は2ヶ月くらい使うかもしれませんね。より多くの量、より多くの動きをこの市場に生み出すことになります。スイスには10万人の潜在的な大麻患者がいるという政府の公式な数字発表がありますから。 そして、今現在、公式には全国で3000人しかいないんです。
なるほど。医療大麻の患者さんが健康保険を適用するのは、将来的にも難しいのでしょうか?
そうですね、そこは大きなポイントだと思います。日本ではどうなのかわかりませんが、スイスでは健康保険がいつも問題を抱えています。価格も上がって、みんなイライラしています。 そして今、新しい処方箋を持った10万人の医療大麻患者が、それを払ってもらいたいと言えば、さらに状況は悪くなります。だから、そう簡単にはいかないと思います。でも、100スイスフランぐらいで300スイスフランもしないような安い薬であるなら、将来的にむしろ受け入れてもらいやすくなると思います。
ミッションについて
創業者として、アストラサナのミッションについても教えてください。ウェブサイトに「麻の第二次産業化」ということが書いてありましたね。もう少し詳しく教えてください。
ええ、もちろんです。ここ数百年のヘンプの産業化についてはご存じだと思いますが、ヘンリー・フォードはヘンプから車を作り、聖書はヘンプの紙で印刷され、家はヘンプで建てられるようになったのです。 その後、この50~60年で、製薬会社や製薬産業が、小さなヘンプよりもはるかに大きく、強力になったため、その方向が変わり始めました。
当初、ヘンプはドラッグではありませんでした。ヘンプからドラッグを作ることができると理解するまでに、何百年もかかりました。そして、そのヘンプの産業化以前、欧米、中国、アメリカなど世界のいたるところで、麻は最もよく使われていた原料の一つでした。そして、薬としても使われ始めました。その後、恐らく1800年くらいですが、薬としても使われ始めました。そして、1900年初頭、コロンビアのコカインをめぐる反ドラッグ戦争のために使われなくなりました。それで、大麻の評判が悪くなったのです。大麻は突然、あらゆるジャンキーの入門用麻薬として知られるようになったのです。
そして、今日、私たちは、大麻の第二次産業化に直面しています。食品として、医療として、そしていずれは家を建てたり、工業的な方法で他の製品を作ったりするためには、本当に興味深い原材料になり得ます。価格的にはベストではないかもしれませんが、限られた資源や供給源を考えると非常に有効です。
麻を煙草や薬などに使うと、廃棄物が出ます。この廃棄物は、実は他のものにも簡単に利用できるのです。そこで以前、私の最初の会社で、大麻製品を作るとき出る廃棄物を有効活用しようというプロジェクトがありました。 私たちは大麻製品を抽出し、その抽出液を取得後、古い抽出済みの植物体を数百kgほど第三社に送りました。 私は、大麻は、医療や食品だけでなく、より広い範囲で使用することができ、本当にクールで興味深い側面を持っていると思います。そして、第二次産業化は、まだ始まったばかりですが、必ず実現し、100年前よりも大きくなると確信しています。これが我々のミッションです。
なるほど、素晴らしいですね。つまり、大麻を医療や嗜好だけではなく、より広い分野で産業化していくということですね。
そうですね。私たちだけでは、例えば家を建てるなどできませんが、色々な方々とコラボレーションをしていくことで実現していきたいです。大麻を全て丸ごと活用したいです。大麻から無駄な部分を出したくないので、弊社で使えない部分を無料で提供することも考えています。そこから新しい製品が生まれてくると嬉しいです。
これまでの大麻産業で得た知見, ファイナンスの重要性
これまでの大麻産業で学んだ経験、そしてアストラサナでその知見をどのように活用したいかについて、教えていただけますか?
医療、嗜好、研究などの多岐にわたる分野において、大麻関係の会社は垂直統合されていると魅力的です。一方で、やはりフォーカス(選択と集中)も必要だということを学びました。
また、大麻産業においてファイナンスは重要で、短期的には資金があれば上手くいきますが、それ以上にお金を生み出すビジネスモデルを構築できていないと長期的には崩壊します。アストラサナでは、常に投資家や新しいお金が入ってくるようにしています。CBDや大麻産業は波が激しく、常に何かが起こる可能性があり、最低でも1年間はお金を失っても、ビジネスを継続できるように準備する必要があります。
もう一つ、過去6年間の大麻産業における様々な人々との繋がりの集大成がアストラサナです。私が今まで会ったすべての素晴らしい人材が弊社に集まってきています。
大麻産業ではファイナンスが重要とのことですが、日本ではCBD企業がファイナンスを受けるのは非常に難しい状況です。スイスでは、通常どのように資金調達をしているのでしょうか?
大麻を扱う会社の99%は、政府からの融資ではなく、民間人や企業からの融資を受けています。しかし、1つだけ例外があり、それは、私たちの独占契約を結んでいる原材料の共同開発者です。彼らは実際に政府系銀行から融資を受けました。 しかし、基本的には民間からの調達であり、日本と同じ状況であるという認識です。
アストラサナの製品/サービスについて
次に、アストラサナの製品・サービスについて伺います。強みや弱み、他社との違いについてお聞かせください。
実は、1年前にとても素晴らしいアイデアを思いつきました。テーラーメイドの特別なディストレート原料です。私自身は、どの市場でも、これは日本だけでなくヨーロッパでも同じことですが、大麻にはできるだけアントラージュ効果があるべきだと考えています。つまり、1つの製品にできるだけ多様なカンナビノイドが含まれていることです。 日本のメーカーがそうした製品を自前で生産することは、簡単なことではありません。様々な成分や幅広い商品を扱うには、大きなラボが必要ですから。今のところ、日本の市場では、いつも2つの種類の原料が売られていることが多いです。CBDアイソレートと、CBNアイソレートです。場合によっては、多少のテルペンやマイナーカンナビノイドが入っていることもあるかもしれません。
私たちは、CBD製品メーカーや食品メーカーなどに対して、4つのカンナビノイドをそれぞれ同じ量含むディストレートを提供することに決めました。例えば、CBD20%,CBN20%, CBG20%, CBC20%という具合です。それぞれのメインとなるカンナビノイドを変更することもできます。そして、沢山のテルペンを入れます。他社は通常、CBD90%と、残りが他のカンナビノイドというパターンが多いです。
BtoCについては、今のところ私たちのビジネスではないので、本格的に取り組むつもりはありません。この分野では、専門性の高い企業が既に日本に存在すると思います。私たちは原材料に特化し、メーカーや製品を持っている人たちに、革新的な製品、革新的な原材料を提供したいと考えています。 そして日本の皆さんが、カンナビノイドの割合についてアイデアを言ってくれれば、望むものをカスタムして提供することが可能です。日本ではこうした製造が容易ではないので、こうしたカスタムがスイスから提供できる付加価値だと思います。市場のニーズに合わせた独自の製品を作る手助けをしたいのです。
チカコさんからも、製品に関して何かコメントはありますか?
この原料をカスタムできるようにするというのはイヴのアイデアですが、消費者のニーズにも合っていると思いますし、ユニークだと思います。既に日本の多くの顧客が製品に関心を持っている状況です。ですから、市場に新しいニーズ、新しい需要を生み出すことができると、私は超ポジティブです。
そして、特に日本では、先ほどイヴがお話したように、ラボや化学者や調合師が不足しているのです。 例えば、大企業には化学者や処方できる人がいますが、カンナビノイドについて知っていて、それらがどのように作用し、どのように原料や製品を作るかを知っている人の数は非常に少ないのです。 私たちの欧州最先端の知識を活用し製造工程や製剤工程をカバーすることで、日本企業の皆様はそのままビジネスを開始し、すぐに販売に繋げることができます。
日本のCBD市場について
既に多少言及されているかもしれませんが、あなたが日本の市場をどのように見ているのか、もう少し教えていただけますか?
日本は本当に面白い市場だと思いますし、同時に始まったばかりの状況だと思います。CBDについての認知度は2~3%ぐらいでしょう?これから毎年成長していくと思います。また、日本人は学ぶことにオープンで新製品を試すことが好きです。欧州では、あまりそうではありません。理解していなくても「知っているよ」と知ったかぶりをするプライドの高い人が多いです。
日本の産業については、2つのことが必要だと思っています。まず第一に、これはメンタリティの問題かもしれませんが、オンラインだけでなく、ショップ、実店舗、フランチャイズのお店が必要です。なぜこのようなことを言うかというと、店舗を通して、政府、事業者、消費者が、感化され、CBDや大麻に関して意識するようになるからです。大通りに大麻の店があったら、たまたま何となく入って、いつの間にか理解する人も多いはずです。オンラインでは、最初から目的や関心を持っていないと訪問することができません。スイスでは解禁当時、店舗が増えるのは本当にあっという間でした。1つオープンすると、2つ、3つ、4つとドンドン開店していきました。最初はCBDショップから始まりましたが、今は大きなスーパーマーケットチェーンでも製品が入り始めています。日本でもっと実店舗が増え、それを見ることができるようになればと思います。日本は非常に面白いユニークなマーケットですから。これが、産業全体を前進させるために必要な1つ目の要素です。
もうひとつは、独立した大麻に関する大きな協会・団体が必要だということです。私の知っている限りでは、日本では小さいところが乱立している一方で、一本化されていないと聞きました。スイスでは、最初2つありましたが、大きなところは1つに決まりました。ドイツでもそうですし、欧州は大体の国が一つの大きな協会にまとめることができました。今こそ力を合わせて、日本でも一つの大きな連合体としての協会を作る時だと思います。日本政府とのコミュニケーションの窓口を持つためには、日本にこの大きな組織が必要だと思います。そしてそれは、複数の協会に分裂していては意味がありません。どんな意見を持っているか関係なく、全ての関係者を内包するような、一つの大きな団体である必要があります。スイスの協会には、私たちの最大のライバルがいます。 お互い嫌い合っていますが、でも、隣に座って議論をする。これは本当に重要なことです。友達のクラブではなく、大麻産業のクラブです。そして、それをやってこそ、産業を大きくできます。「大麻産業を前に進めたいなら、一つの大きな協会が必要だ!」これを今回のインタビューのタイトルにしてください(笑) 競合、パートナー、友達、全員で、一つのことのために一緒に戦う。その結果、日本国内でも大麻産業が力を持つことができるようになるでしょう。
とても興味深い洞察です。全く同じ問題意識を持っていました。ありがとうございます。一つにまとめるために、僕も何か動いてみます。チカコさんからは、日本市場について他に何かありますか?
イヴの指摘した内容に加えて、私は規制が重要だと考えています。今年予定されている大麻取締法の改正ですが、予定よりも遅れるということがニュースになっていました。これにはメリット・デメリットの両面があると思います。
私たちの視点で、法改正が遅れることのメリットとしては、競合である欧州企業の日本進出が少なくなることです。規制が変更され、THCの基準値が設定されれば、私は非常に速い動きをしたいと思います。アストラサナを日本でTHC製品を一番早く通す企業にしたいです。また、部位規制がなくなれば、フラワー製品も日本に持ってきたいです。チャレンジングですが、ぜひ挑戦したいと思っています。そしてデメリットとしては、市場淘汰が遅れることで、産業全体のビジネスリテラシーも低いままの状態が続くことです。しかし一番のデメリットは、日本の経済的恩恵への損失と、必要な人たちが必要な時に安易に大麻製品を手に入れることができる環境作り、つまりアクセシビリティの遅延だと思います。
アストラサナの日本展開
アストラサナの日本でのビジネスの現状についても少しお聞かせください。
私たちは、3月3日に日本法人を設立しました。また、日本国内のパートナー企業にご協力を得ながら国内に原料在庫を持ち、多くの原料を正規輸入しながら、皆さまのニーズに応えていきたいと思っています。
また、健康食品業界に明るいコンサルタントや、医療分野の専門家等からの様々なアドバイスを頂いています。他産業の方々から見ると、今のCBD業界はカオスな状況であるとのこと。例えば、CBDが流通するためのシステムが整っていないとのことです。私たちが、自分たちでそうした流通システムを作りたいという気持ちはありませんが、規制緩和により大手企業が参入してくれば、従来の流通システムと同様のものを作りたがるでしょう。私たちとしては、そのような変化に備えたいと思います。小さなチームとして機敏に動き、私たち自身の製品を広めつつ、産業全体を広げるような動きをしたいです。
なるほど。ゲームのルールが変わるということですね。面白いですね。
大麻産業の課題や、その中での目標
このビジネスにおけるチャレンジや難しい点、そして、この業界の好きなところや目指すものについても聞かせていただけますか?
4年前は通関の問題などがありましたが、課題は日々変わっています。時とともに違う難しさがありますね。以前はイタリア国内での製品の流通も難しかったです。
大麻産業の課題は常に変化しています。今日の課題は、おそらく教育です。人材を育て、業界外の人を啓蒙し、同時に大麻業界内部の人を教育することです。教育が、ビジネス上の課題というだけではなく、業界全体の課題です。パートナーや運送会社、抽出メーカーなどに対して、私たちがやっていることを啓蒙していく必要があるのです。 彼ら自身が、薬物や何かを悪いものと関わって仕事をしているのではないかという誤解や不安があるとしたら、それらを取り除く必要があります。
大麻産業全般として好きなことは、沢山の動きがあることです。よく言われることですが、大麻業界の1年は、他のビジネスの5年に相当します。まだ未開拓の分野なので短期間で多くのことが起こり、その分、人の成長も早いです。まだまだやることがたくさんあり、あらゆる方向に可能性を秘めていますね。
そして、目指すものとしては、アストラサナとしては医療面でのビジネスや産業を成長させることです。そして個人的には、スイスでも、2026年までに嗜好用のTHCが合法化されると見ており、その一助になりたいと思っています。次のステップは、医療面ではスイスとヨーロッパでのネットワークを増やすこと、日本についてはチカコに任せます。
日本の読者へのメッセージ
では、最後の質問ですが、日本の読者に何かメッセージをお願いします。
まず、私の個人的な目標は、このCBD/大麻領域のサポーターになることです。CBD部のコミュニティや、GREEN ZONE JAPAN、PCATなど患者さんを支援している団体を支援することができるかもしれません。
アストラサナの事業を成功させることで、社会や患者さんへの貢献につながると思っています。ビジネスも大事ですが、同時に研究、患者さんのサポートなど、患者さんのニーズや要求をよりよく理解できるような活動をしていきたいと思っています。 患者・薬剤師・医師・医療従事者の方々の間のギャップをどのように埋められるかを模索し、結果的として、アストラサナが医療分野でも一緒に仕事をしていく相手として検討の対象となるよう、実績を積みたいと思います。
また現にアストラサナ・チェコでは、チェコ経済大学経営戦略学科の企業スポンサーとなり、医療用大麻における医師、薬剤師、患者という三者各々のカスタマージャーニーをビジネスの視点で分析調査を行うことになりました。P&G, KPMG, PWC, Red Bullといった一流企業と同じ土俵に乗れたことは身の引き締まる思いです。そしてこの共同研究では、国際色豊かなビジネススクールの学生が企業を選ぶのですが、Googleやロレアル、キリンビール(欧州)といった超大手と一緒にプレゼンテーションをした結果、アストラサナのプロジェクトが取り合いになったんです(笑)多くの学生がカナビスという新しい分野に関心を持ってくれたことは、私にとっては明るい将来を見た感覚でした。
この調査結果が出るのは来年以降ですので、その頃には日本でも法改正が行われているだろうと期待しています。日本の規制及び市場と照らし合わせながら、ビジネス戦略として有効活用できるような体制作りをしていきたいと思っています。これが私の考えるビジネスサイクルです。私たちはすべての点を分析して選択し、上手く結びつけなければなりません。
私からのメッセージは、繰り返しになりますが、一つの大きな協会を日本にも作ること、そして実店舗を増やすことです。それが私からのメッセージです。
お二人とも、長時間にわたりありがとうございました!
カナビス業界で長年の経験や豊富なネットワークを持つお二人から、麻の第二次産業化への展望や、日本市場への提言など幅広いトピックで語っていただきました。私たちCBD部としても、日本のCBD/麻産業の発展に貢献するためのヒントを沢山得られましたので、一歩ずつ実行していきたいと改めて身が引き締まりました。CBDアドベントカレンダーにふさわしいお話をありがとうございました!
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